▪︎きっとわたしが
彼は眠っている。
隣の寝室からいつもの寝息。
明日は5時に起きて、ここから出かける彼。
毎月末の日曜に彼は、
別れた妻のところにいる子ども達と会う。
私は少し。
なんとなく。
切ない気持ちにもなるんだけれども。
父の顔の彼を知らないから?だろうか、
それとも。
もっと単純に
「他の誰かとの間に成した”愛しい”子ども達」に彼が会いに行く、ということが
切ないのかもしれない。
どんな訳にせよ、
月末の日曜は少し。
なんとなく。
切ない。
彼に出会ってから。
ー彼が土日休みの人なのでー
私は日曜をサロンの定休日にしている。
けれども。
月末の日曜だけは営業。
或いは、できるだけ予定を入れるようにしている。
先月末の日曜は、息子が遊びに来た。
そして明日ーもう今日だけれどもー
サロンの予約サイトをオープンにしていたら
フェイシャルの予約が入ったので、
私は安堵しているの。
仕事に埋没。
これが一番私らしい、と思う。
それでも彼はー
日曜に子ども達と会う週末も必ず
私の彼はー
ここへ来て私と過ごす。
今週は金曜の昼に「今日の夜、行っても大丈夫かな」とLineが届いた。
大丈夫、どころか。
ー私はいつも一日千秋で自分を待っていることを
彼はきっと知っているはずなのにー
いつも彼はそう訪ねる。
今日行っていい?とか。
これから行っても大丈夫?などと。
その度、私の心は跳ね上がるようになる。
「もちろん」とか。
「うん、待ってる」とか。
「大丈夫に決まってる」とか。
私は即座に
ー間髪を入れることさえできずにー
ー歳上の女の余裕、のようなものは私には何も無くなってしまってー
そう返信する。
そして彼はいつものようにニコニコとやって来て
私のそばにずっといる。
呼吸が聞こえるくらいに。
吐息がかかるくらいに。
食事の支度をしていても。
食事の後片付けをしていても。
彼は立ち上がって私の隣に立ち、
キスをしたり、尻や腰に触れたりするので
私は堪らなくなりー
私が堪らなくなると、彼もそうなるのでー
そして私は食事の後片付けを諦め
そして彼は易々と私を姫のように抱き上げて、
寝室のベッドに運ぶ。
ドアを閉めてー
と私は言う。
ここは明る過ぎるーと。
彼はシャツを脱ぎながら、そっとリビングに通じるドアを閉める。
終わった後もずっと
二人はベッドの中で揺蕩っていた。
裸のままでー
彼は私の腰を抱いていて、
私は彼の腰の上に足を乗せ、
隙間なくピッタリと寄り添い、
唇とか頬とかおでことかにキスを重ねているうちに
彼は微睡む。
その、
美しくて無防備な寝顔と
私の腰を抱く腕の強さと
彼の甘い体臭、などに私はやられてしまい、
眠る彼から目が離せなくなる。
そして考える。
これはいつも考えていることなんだけれどもー
なぜ?
あなたは毎週末、ここへ来てくれるの、と。
昨日の夕方、初めて彼に訊いた。
ずっと考えていたこと。
訊けずにいたこと。
そのとおりに。
どうして毎週末、ここへ来てくれるの?
私があなたを大好き、大好きと言うから?と。
俺はー
自分が来たいと思わなかったら来ないよ、と彼は言った。
行きたいと思わないところへは、俺は行かない、とも。
ねぇ、もっと。
わかりやすく。
違う言葉で。
俺はー
俺が来たいから来てるんだ、と。
会いたいから来るんだ、と。
お前が好きだから来るんだよ、と。
言ってくれたらいいのに、などと。
思ってしまうんだけれども。

金曜は冷製パスタとビール
土曜はガパオライスと白ワイン
彼と過ごす週末は毎秒が奇跡の連なり。
こうして隣の部屋から彼の寝息が聞こえるなんて。
なんて幸せな夜なのでしょう。
彼が起きる5時まであと4時間。
私は世界で一番幸せな女だと思う。
このblogを書き終えたら、
眠る彼の隣にそっと滑り込んで、
彼の寝顔を見つめていよう。
いつか、終わりが来るのだとしてもー
今は幸せ。
今だけは。
世界でいちばん。
きっとわたしが。
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