▪︎情熱の冷まし方

土曜の未明、夜勤を終えた彼から
起きてる?と連絡がきた。
終わったから向かう、と。
思いがけず(深夜)2時半に着くという。
心は弾み。
胸は高鳴り。
どうにも収拾がつかないほどにドキドキが止まらない。
生娘みたいだ、と
自分を笑ってしまうくらいに。
3日分の作業服と3日分の下着と
いつも彼が被っている帽子。
ジャケット。
みんな洗濯機に放り込んで
深夜の夕食。

軽くでいいよ、というので
野菜を中心にし
レタスのコンソメスープを付けて。
結局彼はご飯をお代わりして食事を済ませ、
会えなかった間の仕事のことなどを
みんなみんな話す。
私はただただ相槌を打ちながらそれらに聞き入り
あんなにも不安になったこの10日余りの自分の滑稽さに気づいた。
何も。
何一つとして。
心配も憂いも感じる必要は無かったのだと。
何もかもは。
私自身の中に巣食っている疑心や不安に依るものであったことに気づいた。
私を不安にさせ、苦しめたのは彼ではなく。
自分自身だったのだと。
夜は眠れなかったし
食事もほとんどできなかった。
頭も痛く。
ジムへ行くモチベも無く。
半ば廃人か、あるいは死人のように。
私は彼と会えなかった日々を
やり過ごしていた。
その愚かさに失笑する。
彼といる時間のこの
大いなる安堵は。
と考える。
何にも勝る、かけがえのないものだ。
深夜の食事を終え
ベッドに入り、
健やかな彼の寝息に包まれて
昼近くまで二人で眠った。
彼の大きな、温かい背中。
そこに鼻を押し付けて。
朝食ーと言っても昼過ぎだったがーの支度にキッチンに立っていると
彼はにこやかに私の隣に立ち
背中や腹や胸に触れ
キスをするので
私はもう、朝食の支度どころでは無くなってしまいー
そのまま二人はベッドに傾れ込んでー
会えなかった10日余りを
身体で紡ぎ、確かめ合った。
彼の大きな身体
しなやかな背中
熱い腹。
熱い指。
熱い彼自身。
終わる時の吐息。
打ちつけてくる腰の強さも何もかもをー
堪能し
享受し
私も共に極みに達する。
これからも
◯君と私は
こんなふうに続いていく?
今日、夕飯の時にそう訊ねたら、
「うん」と言ってうなづいた。
彼は孤独を感じることが無いと言った。
一人でも生きられる人なのだろう。
ではなぜ?
あなたは私といるの?とは
訊けなかった。
だって。
私も一人で生きられるのだもの。
それでも
彼と過ごす時間は宝の時間。
孤独を感じずとも。
ひとりで生きられても。
私たちが双方
週末は共に、と思っているのならば。
そしてそれが
この先も続いていくのならば。
それが二人のすべてなのではと思う。

今夜は白ワインと
ガリバタ茄子と
チキンソテー
など。
初めてのデートから半年になる。
あの時あなたは
今の情熱がずっと続くといいけど、と
言ったけれども。
冷めないといいな、と
言ったけれども。
冷めるどころではないの。
どうしたら冷めるの?
と今日彼に訊いたら
分からない、と言って、彼は笑った。
私にもわからない。
情熱の冷まし方、などは。
二人はこのまま歩みを進めることだろう。
情熱は冷めやらぬままに。
週末の度に逢瀬を重ね。
いずれ彼の子ども達も成長を遂げることと思う。
時の流れとともに
私たちの周りは変化していこうとも。
変わらず揺るがぬまま。
君と共に。
と願う。
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