▪︎限りある命と・限りのない愛と
今朝、6時半にkを見送った。
確かに春に繋がっているはずの、
けれどまだ少し寒い朝。
土曜の夜からずっと、kがここに帰ってきていたので
今朝の玄関での二人は
ーいつもと変わらずにkissを交わすのだけれどもー
ほんの少しだけ、ここ数日の朝とは違う空気の中に在った。
言葉にはしない。
代わりに目と目が伝え合っていた。
また数日、会えなくなることが分かっているその、
切なさのようなものを。
私にも、これまでに愛した人はいたし
もちろんそれは彼にもいた。
夕べは白ワインを飲みながらそんな話をした。
これまでの女性たちはなぜ
あなたを手放したのかしら。と。
いや、俺が手放してきた、とkが言う。
別れはいつも俺からだったよ、と。
私もそうだっだ、と思った。
いつも、別れの言葉は私から。
そこに愛の片鱗が残っていたとしても。
告げられる悲しみより、告げる苦しみを選んできたと思う。
別れは。
言い出す方も苦しい。
愛し合った記憶に終止符を打つのだもの。自ら。
私はすこし不安になった。
いつか二人にも、その時は訪れるのだろうか、と。
kは別れを告げられた経験がない。
私にも。
では、どちらが言い出す?いつか?などと
想い巡らせていたら
kがふと話題を変えたので、
私はホッとして、もうそれ以上、その話をしなかった。
いつまで、と考えることはしない。
いつかは終わる。
命には限りがあるのだし
この世に永遠は存在しない。
だからこそに。
二人で過ごし、限りない愛を
ー命には限りがあっても。愛には限りがないからー
交歓し合える今が
こんなにも尊いのだし、
だからこそに。
狂おしいほどに彼を
愛しく想うのだろう。
今度いつ会える?とは訊けないので
またね、と言った。
彼が車に乗り込んでも尚、二人は別れ難く
運転席と外とで抱きしめ合っているので
なかなかドアーが閉められない。
とはいえ車は去り、私は夢からうつつに戻る。
戻らざるを得ないので戻る。
洗濯機を回し、
kが平らげた朝食の食器を洗いながら、
さっきまで彼が座っていた、
今は空になったリビングを見つめる。
それから寝室のドアーを開け、
二人が寝乱れたままの、ベッドを見つめる。
そこかしこに宿る彼の残像を確かめるようにしながら
今日がまた始まる。
恋は素晴らしい、と思う。
人を優しくする。
誰かのために生きたい、と思わせる。
誰かのために生きられることは奇跡なのだと、気づかされもする。
孤独でもいいと思っていたし
独りは嫌いではないけれども。
独りの喜びを知る者ほど
二人の時を享受できるのかもしれない、と。
それは自分自身もそうなんだけれども。
離婚以来ずっと、独りで生きた彼も
そうなのだろうと。
いつもkを見つめながらー彼の孤独を心の中で感じながらー
そんなことを想っている。

#大人の恋#孤独を知る者#別れの言葉は私から


