▪︎恋は刹那の。
彼は帰り、
私はいつものようにひとり。
二人は、どこへも行かない。
近所のマーケットに、夕飯の買い出しに行く以外は。
桜が満開でも。
爽やかな春の日でも。
初夏のようなお天気の日でも。
私たちはリビングで、
ただ寄り添って
触れ合いながら過ごす。
テレビでアマプラのドラマを観ながら。
珈琲を飲みながら。
特に、たくさんの言葉を交わしもせずに。
その、静かな安堵と。
緩やかに流れていく時間の中に
揺蕩っているうち
日は暮れ始め、
そしてまた二人は愛を交わす。
ぴったりと。
どこからが彼?どこまでが私?
その境は無くなり
見つめ合ったままで
二人は共に脱力する。
風呂に入り、
夕食を済ませ、
彼が部屋着を脱ぎ、着替えをし始めたら帰る合図。
それは毎回、その都度に、
ほんの刹那、わたしの胸を締め付ける。
帰りの玄関で交わすキスも。
「次は金曜の夜にね」の言葉も。
腰を抱き寄せる彼の強い腕の力も。
それも毎回、その都度に
必ず交わされる二人の儀式のようなものだ。
この、大切な二人の時間を
積み上げ、積み重ねてゆくこと。
それだけ。
それ以上も、それ以外も今。
望むことが怖い。

切ないのに。
刹那なのに。
それでも手放すことはしないと思う。
私は彼を。
彼は私を。
#大人の恋#恋愛小説#最後の最愛#刹那

