▪︎耳を塞いで
水曜の朝に彼は来て。
そして水曜の夜に彼は帰り。
木、金と仕事をし。
その夜に私のところに来た。
行ける時は行くよ、と彼はいつも私に言い。
そして必ず彼はそれを守る。
金曜は、現場の帰りに会社に寄ったので
ここに着いたのは23時近かった。
お腹空いてるの?
風呂に入る彼の背中に訊くと
かなりと答えた。
枝豆を茹でる。
パスタを茹でる。
彼の分は300g。
こともなく、サクッとそれを平らげ、
ピザやサラダや、枝豆もみんな。
あっと言う間に消えてしまい。
そして彼の瞼はもう閉じ始める。
その様があまりに愛おしく。
私は胸が苦しくなる。

彼の仕事着の入った洗濯機を回していたら
月曜も休み
と言った。
え?
月曜も休み?3連休なの?
そう。
長野。
行かれちゃうよね?
行かれちゃうね。
実はGW に、長野へ行こうと話していた。
けれども彼に、急な予定が入ったため
その計画は立ち消え、
私はそのことに触れることもできなかったんだけれども。
彼の中にきちんと
その約束が残っていたことや
GW明けの週末に「行かれるね」とさりげなく言うことも。
ーそれも面と向かわずにー
私が洗濯を回しているときにときに言うことも。
些細と思えることのすべてが
愛しくて私はー
言葉を失う。
今彼はもうベッドで眠っていて
私はリビングでこのblogを書いていて。
彼の仕事着が乾燥機の中でぐるぐると回っている音がしていて。
私のワイングラスにはまだ赤が少し残っていて。
彼がここにいる。
私の家の。
私のベッドで、静かな寝息を立てている。
そして2人は
明日も
明後日も
その次もお休みで。
叶わなかった旅行は叶おうとしていて。
こんな風に。
彼と過ごす時間はいつも幸福に満ちている。
そして。
それが私は時々
怖くてたまらなくなる。
この
美しいこの人が。
こうして私を訪ねてくる週末はあと何度巡る?
私は時々
ー真剣にー
天のどこかでこの恋を見下ろす
恋の神様に訊ねてみては。
訊ねたそばからその答えに、
耳を塞いでいる。
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