▪︎途方に暮れる

夕べ、遠方で遅くまで食事会だった彼は、

今朝早く起き、お昼前にここに来た。

いつものように。

当たり前のような顔をして。

ニコニコと私に近づき、

いつものように。

私の腰を抱いてキスをする。

そして私はそれに応える。

いつものように。

お昼前だったので

そのままブランチにした。

珈琲を落とし、

バターたっぷりのバケットをトーストし、

オニオンたっぷりのオムレツを焼き、

ベーコンを炒め。

彼は嬉しそうにそれを平らげる。

いつものように。

何も変わらない。

毎週末繰り返され、

少しずつ親密になっていく二人の関係、

だと思う。

それなのに。

ブランチの後、彼がテーブルをリビングの隅に寄せ

二人は広くなったリビングの床に寝転がって

先週末の続きのアマプラを観る。

彼は始終、私の足や尻に触れながら、

私は始終、彼の腕や胸に触れながら。

そして二人は昂り、

テレビを点けたままで

リビングで絡み合い、

同時に果て、

甘い長い終わらぬキスを交わす。

惜しみなくそれは交わされ、

私は下腹部の鈍い痛みと彼の抱擁に恍惚となる。

いつものように。

それなのに。

夕方になって買い物に出かけた。

彼がカートを押し、

私がカゴの中に野菜や魚や肉を入れ、

合間に彼がフルーツを足したりしながら。

しあわせに慣れていない。

この、心の揺らぎはいつまで続くのだろう。

夕食を頬張る彼を見つめる。

見つめられていることに気づき、

彼も私を見つめ返して、そっと笑う。

私は不意に思ってしまう。

「もう。」

「今日でお終いにする?」

ーもしも今、この形の良い唇がそう告げたらー

などと。

心の底から思ってしまう。

彼はそんなことは言わないんだけれども。

なぜ、こんな気持ちになるのだろうと

彼の寝息を聞きながら、私は今この日記を綴っている。

彼は。

週末は必ずここへ来ている。

それはなぜなのだろう、と思ってしまうのは

なぜなのだろう。

この感情は。

これまで感じたことのなかった感情。

なので、太刀打ちができない。

どう処理したものかが分からなくて

私は途方に暮れている。

愛し過ぎている?

それとも。

愛し足りていない?

しあわせがこわいだけ?

どうしたらこの週末に私は慣れることができる?

誰にも訊けず

答えの無い問いに。

私はまた途方に暮れてしまう。

#大人の恋#最後の最愛#恋愛小説#しあわせになれていない