▪︎裏腹-夢みたい、夢ではないのに−

夢の時間は消える。

それは夢なのだから仕方が無い。

昨日の21時頃に、kはここへ来て

風呂に入り、

食事をし、

夕べは焼肉とシーフードサラダ。

それからkは、私を抱いて眠り、

朝に微睡みながら深く抱き合って、

ことの後に、止まらぬkissを二人は

ーまるで箍が外れたように。

惚けたように。

時間の概念を失くしたように。ー

繰り返し、繰り返して、繰り返した。

互いの身体の、線という線をみんな手繰り寄せ合いながら。

味わいながら。

絡み合った舌と舌が、蕩け出して溶け出して

それを中心にし、

相手の中に傾れ込み、流れ込んで、自らの正体を失くすくらいに

唇を重ね合ったまま、

二人は手の平で互いの身体の隅々を愛撫し合った。

長い長い、長い時間をかけて。

あの時間を。

夢、と呼ばずになんと?

今日はブランチの後、ドライブがてら買い物に出かけ、

その車中、彼は愉快そうに仕事の話をたくさんしてくれて、

私はそれが嬉しくて、

ずっと二人で笑い合いながら車は走る。

春間近い、青い青い空をくぐり。

途中スタバでドリンクを買い、

私がオーレ、kがフラペチーノ。

帰りにドラッグストアに寄って、15種類の入浴剤を買い、

マーケットで夕飯の買い物をし。

帰宅して風呂を溜めているとkが

「今日のお風呂はどれにする〜?」と嬉しそうに訊く。

「那須塩原の温泉にしよっか〜」などと。

バスタブに浸かったkが、ハ〜〜〜ッと、

気持ち良さそうに弛緩し、

伸びをする緩んだ声が聞こえてくる。

私は食事を作りながら、とても幸せな気持ちになった。

風呂を上がると、夕飯ができるまで、

新しく刷り上がった、私のサロンのチラシを折ってくれる。

何もかもがまるで夢としか。

なぜこの人は毎週末、私のところへ来てくれるのか。

堪えきれずに、キッチンで抱き合う時にも、

ベッドの中でも、

好きだよ、と。

大好き、と。

言ってくれるのはなぜなんだろう、などと。

いつまでも君はこうして。

週末が来るたびにここへ来てくれる?

訊けない。

question。

今夜は韓国料理にしようと

スンドゥブチゲとプルダック激辛。

なんでも平らげてニコニコと笑う人だ。

あなたはいつも、私を幸せにしてくれているけれども、

私はあなたを幸せにしてあげられているかしら。

ハザードランプを点滅しながら帰っていく車を見送ると

まるでいつもと同じように。

彼のいない当たり前の暮らしがそこに静かに横たわっていて。

夢は覚めた、と思う。

夜が来るのはこれからからなのに、と。

それがやるせなくて、こうして私はパソコンに向かっている。

kと過ごす時間は愛しくて儚くて

苦しいくらいに幸福で。

ただ、私がこの「幸福」に慣れていないため、

いつもそれが少しの切なさを孕んでしまう。

終わりが来るのでは。と。

それを望まぬのに。

その想いに取り憑かれたようになる。

いつか来るかもしれないその時のための準備を。

しておかなくては、などと身構えてしまう。

もしもあす急に

「わかばごめん。もう、そこへは行かれない」などと言われても

取り乱したり、

混乱したりしない私でいなくては、などと。

歳上なのだから。とか。

彼はすてきなのだから仕方が無い、とか。

言い訳や理由を考え、考え、

頭はぐるぐると巡るのだけれどもその傍らで私は、

夕べの彼の甘い吐息や

私の奥で果てる瞬間の彼の呻きや、

止まることのなかった夥しい数の、彼からもらったkissの余韻を想う。

チラシを折る彼を想い、

私のグラスにワインを満たす彼を想う。

そして私は今度は安堵する。

私たちはとても愛し合っていて。

求め合っている、と。

この裏腹。

こそが。

恋する女の真髄だろう、とも思う。

これが他人の恋ならば。

彼はあなたを愛しているでしょう?と言えるのだろうか。

大丈夫よ

何も心配要らない、と。

愛されているから不安なだけよ、と。

幸せな悩みだわ、と。

帰宅したkから、いつものようにLineが届く。

ただいま、わかば。

お腹いっぱい過ぎて幸せ太りしそう

また行ける時は連絡する、と。

明日からまた4時起きのk。

私はこれから、

kの入った風呂に浸かる。

kが選んだ、那須塩原の入浴剤の入ったバスに浸かり、

夕べからの二人の時間を反芻し、

ー夢みたいだった、けれどもー

夢ではなかった、と。

昨日と今日の二人は確かに。

愛を以って二人でいたことを。

確かめよう。

来週末までは、また。

互いに仕事に埋没し、そして新しい週末に夢のような

ー夢では無いけれども夢のようなー

二人の時間が訪れるまでは。

現実を生きよう。

大切に。

別の場所で。

あなたと共に。

#大人の恋#最後の最愛#恋愛小説#夢は覚める#夢みたいな夢ではない時間