▪︎trust and gift.
明日の夜、来てくれるのですって。
来週末まで忙しいと言っていたんだけれど。
kは、「行っていい?」と言わない。
「金曜、行けるよ」
「待ち遠しい」と
断定語でくる連絡。
そこにはkの
私への100%の信頼が隠れていて。溢れている。
私は断らない。彼のsuggestionは、必ず受け容れられる。
鷹揚な愛を以って。
そしておそらくは彼にとっても、
ー断られない、ということはー
大きな安堵だろう。
もしもkが、それらのことには気づいていないとしても、だ。
「許されている人」
「迎え入れられる場所」
それらを確信している男の言葉の、なんと優しいことか、と思う。
「断られる未来を一切想像していない」という信頼。
そして。
大切な男に「暖かな信頼の居場所」を差し出せる
自分自身の幸福を想う。
互いが、互いを、導き合う愛の構図。
シチューが食べたいという。
この間は鍋をつついたんだけれど。
一人では食卓に上がらないものたちだ。
そしてそれは、私もおなじ。
誰かのためにキッチンに立てることも、
本当に幸せなことだったのだ、と気付かされる。
子ども達と離れてから、
一人の食卓は味気なく、
何も食べない日も多く、
深夜に空腹を感じてUberで済ませたり。
一人では無い、ということは
とても幸せなこだ。
この、「他者のいる煩わしさ」こそが、
愛の象徴だろう。
きっと今、二人それぞれに、そのことを思い出している。
彼にも離婚歴があり、
それぞれに「孤独の真髄」を知る二人は今
「孤独では無いこと」を享受し合う。
歯形がつくほどに、
噛み締め合い。
一睡もせずに、
確かめ合う。
夜毎の夢の中で。
恋の初めは、
ドレスアップしたレストランなどへ繰り出す
華やかなデートもあるだろう。
ーまして、年末近い今の時期はなおのことー
けれども。
愛は実は、小さなキッチンの灯りの下に
静かに横たわっているもの。
鍋をかき混ぜる音、
湯気の向こうのふたりの距離、
同じテーブルを囲む確かな、密やかなぬくもり。
「誰かのために作る」という、
自分の中の「愛の器」に気づく時間。
そしてテーブルの向こうに
それを食べながら微笑む恋人ががいることは
孤独を知る者にとっての
何にも変え難いギフトだろう。
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