▪︎ささやかで静かな

昨日の夜、

ふだんは連絡を寄越すはずの無い夕方16時半に

kからLineがあった。

今日は何時に終わりそう?と。

昨日は、9時からサロンにお客様があり、

午後のカウンセリングも終わり、

リンパマッサージで使用したタオルの洗濯を

ちょうど干し終えたところで

ジムで走ろうかな、と思っていたところだった。

まるで、それを見越したようなタイミングのLineに

笑ってしまう。

これが昨日だったら、と考えた。

前日は最後のお客様が帰られたのが21時過ぎだったから

昨日だったら会えなかったかしら、などと。

いずれにしても。

私たちはどうしようもなく引き合っているので、

偶然のような必然はたくさん支度されている。

そしていずれにしても。

今夜また彼がここへ帰ってくるー

そのことに私の胸は塞がれた、目一杯に。

ジムへ行き。

買い物をし、シャワーを浴び。

米を研ぎ、風呂を沸かす頃にkが帰ってきた。

長細い箱を持って車を降りてきたk。

お返し、と言っただろうか。

ホワイトディかしら、と思ったけれど問いただすことはしなかった。

青い、スパークリング。

これは冷やして週末に開けよう。

彼は仕事の前日にはアルコールを飲まない。

夕べはすき焼き。

いつものように、ご飯3杯のk。

頬張る彼から目が離せなくなる。

いつものことだけれども。

kの伏せた睫毛が、部屋のライトに照らされ

頬に陰影を象る。

その、美しさに見惚れ、

食事の所作にも見惚れ、

私の視線に気づいて、瞳を合わせにっこりと笑う、

その、上質の笑顔にまた見惚れてしまって、

私はもう、食事が喉を通らなくなってしまう。

このような夜はあと

何度訪れる?

答えのわからない無意味なクエスチョンはやめよう。

今、この時を。

世界で一番愛しているたった一人の君が

私の目の前に在って、肉を頬張り

目を合わせて微笑んでいる、この

ささやかで静かな幸福は、私一人のものだもの。

これ以上何も要らない、と思った。

ただ、君が目の前にいてくれさえすれば。

私の全宇宙は満ちるのだから。

仕事の話をした。

kは自分の仕事の話もたくさんし、

私の仕事の話も色々訊ねてくれる。

お互い、個人事業主の二人は、共有できる想いも多く、

彼の仕事に対する真摯さに、私はいつも憧れている。

夜は甘く。激しく。

寝室の仄かなライトと、

二人の呼吸と、密やかな吐息と、

慈愛で溢れた。

4時に起きて

味噌汁と珈琲と苺だけのテーブル。

kが

「今日も来ようかな。」と言った。

囁くような。

低い声で。

私の心臓が、ドッキンと音を立てたことに。

彼は、

気づかなかったかしら。

#大人の恋#恋愛小説#最後の最愛#ささやかで静かな幸福