▪︎幸福のなまえ
桜咲き、桜舞う初春のおやすみ。
そんなことにはお構いなしに。
朝早く起き出して、朝食も済ませたのに。
なのにも拘らず。
私たちはどこへも行かず、
朝からリビングに陣取り、
朝食の後からずっと、
ソファに並んでアマプラを見続けていた。
物語が佳境に入っていても
それにさえ私たちは関せずに
キスを交わし、互いの肌に触れ合い
そのうちに堪らなくなって
リビングのカーペットの上で愛し合う。
夕べのワインはもうとっくに醒めているのに
私は彼といると
なんだかずっと酔い心地のまま。
いつもは月末の日曜に用があるk。
来週末は用が無いんだ、と2日前になって初めて言うのだ。
え、じゃ、会える?こっち来る?と訊くと
うん、行く。と言った。
彼があまりに素敵なので
ーと、私は心底に思っているんだけれどもー
いつか急に離れていかないかしら、とか
他の誰かに持っていかれやしないかしら、などと
私は時々怯えてもいるんだけれども。
彼はいつも
そんなこと言うのはわかばだけだと笑う。
魔法にかかっているんだ、と笑う。
そして欠かさず毎週末、
それは予定のある月末の日曜の、前日であっても。
金土日、と3連休の時は、きちんと木曜の夜から。
kはここへきて私と過ごす。
始終ニコニコと笑顔で
仕事の話や、子供の頃の話などを
愉快そうに話す。
そして毎夜私を丁寧に抱き、
夥しい数のキスをする。
今日、リビングの灯りを落として
暗い部屋でドラマを見ている時
隣に座る彼の横顔の
凛々しさ、とか。
額から鼻を通って唇に降りてくる稜線の美しさ、などに
私はたびたび見惚れていた。
彼は私の視線に気づき、
目を合わせずに横顔のままで笑った。
今、最終話の8話まで一気に見終え、
リビングで寝息を立てている。
この、静かな。
穏やかな。
幸福に満ち
平和で
安らかで、
そしてとても甘い
この時間と、この想いに。
なんて名前を付けたらいい?
眠る彼にそっと私は訊ねている。
心の中で。

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