▪︎些細で、ありふれた朝

明日からまたお互いに仕事。

今日は10時までゆっくり眠った。

アラーム無しの、

ふたりきりの幸福な休日の朝。

お客様にいただいた餅を焼き。

味噌汁を作り。

リンゴを剥き。

珈琲を落とす。

些細で、ありふれたこの朝の風景が

このまま一枚の絵画のように切り取られ

永遠に、ここに仕舞われたらいいのに、と。

ー叶わぬ夢、のようなことをー

餅を頬張る、愛しい人の伏せた瞳を見つめ、

心底に思ってしまう。

朝食の後、二人はもう一度抱き合った。

止まらない。

愛し合いたい衝動が。

それは優しいキスから始まり

やがて激しく熱く、甘い終焉を向かえるまで終わらない。

午後は、初詣に出向いた。

もう、参拝者もまばらな神社で二人

厳かに手を合わせた。

拍手と礼のタイミングを、呼吸で合わせる二人。

こんなふうに、年が明けるたび

ひっそりと、二人で、と願う。

帰宅して夕食を済ませ

風呂に入り、

kの車を見送る。

玄関で交わすキスは留まることがなく

止めようがなく、

喘ぎながらそれをようやく離し

「またね」と伝えるのが精一杯だった。

車が見えなくなるまで見送り

家に入ったら急に

リビングがとても広く、寒々しく思えて

私はしばらく途方に暮れてしまった。

下腹部に残る

愛し合った後の、鈍く甘い感触と感覚だけが

kが確かにここにいたことの、

二人が確かに交わったことの、

ささやかなシグナル。

無事に帰宅した旨のLineが届き、

私はようやく我に返った。

「いっぱい愛をくれてありがとう」と綴られたLine。

その言葉をそのまま。

ーそれ以上の「ありがとう」を込めてー

そのまま送り返した。

なんだか少し、泣きそうになりながら。

わたしは。

#恋愛小説#大人の恋#最後の最愛#ありふれた朝のしあわせ