▪︎our long night in a short time(1)

翌日、kには予定があった。

会う日まで、休み無しで12連勤していた。

毎日、朝と夜に連絡を取り合い

12月になったら会おうと話していたんだけれども。

12連勤が終わったその夜に

「今日の夜、会えたりできるかな?」とメッセージが届く。

会いたい気持ちは

何にも勝ってしまう。

眠たい、とか

疲れている、とか

12連勤だったし、とか

車で40分かかるし、とか

明日は予定があるし、とか。

それらの類は何一つ

「会いたい気持ち」に到底勝てない。

私はこう答えた。

「今夜大丈夫。というより

私は、あなたに会いたくて仕方がない。」

kは「今夜は酒飲むから、朝まで車中泊するよ」と言っていた。

店を出たのは23:30。

押し黙って歩く。

離れ難い二人。

離れ難い、と言葉にはしないんだけれども。

その、ゆっくり過ぎる歩幅や

さっきまで時間が足りないくらいにお喋りしていた二人の

不自然なくらいの沈黙。

二人の離れたくない想いが、

暗い夜の闇を鮮明に象る。

パーキングの方へ歩きながら彼が言った。

「車の中で、もう少し話しますか。」

それには答えなかった。

パーキングに向かいながら、考えていた。

そして考えていたことを、

彼の車が見えてきてから伝えた。

「うちで話さない?歩いても、ここから4、5分なの。」

「いいの?」

「もちろん」

闇の中で、彼の瞳が光る。キラキラと。

大人はこれだけで、互いに合点がいく。

これ以上の言葉などは、必要が無かった。

#恋愛小説#大人の恋#最後の恋#最後の最愛